ワンランク上の楽しみ方
香立て・香皿でお香をたくのに慣れてきたらもう一段ステップアップして、香りの楽しみ方の幅を広げていきましょう!
お香の楽しみ方のページで紹介しているように、お香は直接火をつけて香りを楽しむものだけでなく、温めて香るものや常温で香るものがあります。そしてお香の種類と同じく、お香のたき方・使う目的も一通りでは収まりません。
『お香をたく』の『たく』という言葉には『焚く』『薫く』『炷く』と3種類の書き方があります。(諸説あり)
焚く:線香タイプのように火を付ける。
薫く:焼香のように炭で焼く、薫ずる。
炷く:香席の聞香のように、火を使わず燻る。
お香についてもっと色々知っていくことで、同じお香でも香りの雰囲気を変えることができたり、使い勝手によって道具を変えてみたり、楽しみ方をアレンジしたり、自己流の楽しみ方を確立したり…と、楽しみ方をどんどん広げていくことができます。
お香の楽しみ方が広がる 5つのメニュー
香炉を使ってみる/お香編
日常的に香立て・香皿でお香をたいている方にまずおすすめしたいのは、香炉を使ってお香をたくことです。
なぜなら、たく頻度が多くなればなるほど、灰の後始末が必要ない香炉の方が圧倒的に楽だからです。そして香立てと違ってお香が燃え残らないのもうれしいポイントです。
また、お香をたく道具としては香立て&香皿よりも香炉のほうが歴史が長いため、意匠の要素も加わりこだわって作られているものが多く、九谷焼・京焼・高岡銅器などの工芸品から洋室にもあうようなモダンな香炉やおしゃれな香炉など、いろいろな香炉が販売されています。
香炉で火をつけるタイプのお香をたくときは…
・灰を香炉の7~8分目までいれます
・お香の先端に火をつけて、香炉の中央にお香を設置します。
・横から見て香炉の外にお香がはみ出ていないか確認しましょう。
◆スティック:垂直に灰にさして安定させる(折って寝かせてたくのも◯)
◆コーン・渦巻き:灰の上にそっと置く
注意するポイント
お香は連続して使わない(少し間をあけて使いましょう)
灰の中に火種が残ったまま使った場合、次のお香に灰の中から火がついてしまう可能性があります。
フタ付きの香炉はフタをあけて使いましょう。
香炉を使ってみる/空薫編
火を使うタイプのお香(スティック・コーン・渦巻きなど)とはちょっと違った香りを楽しんでみたい時は、温めるタイプのお香を使ってみましょう。温めて楽しむたき方の中で手軽にできるのが『空薫(そらだき)』です。
必要な道具は香炉に香炉灰、香炭の3つだけ。煙を出さずにお香を温め、お部屋に香りを漂わせます。
香炉で温めるタイプのお香をたいてみる
香炉で温めるタイプのお香をたいてみる
・灰を香炉の7~8分目までいれます
・火をつけた炭を灰の中に半分ほどうずめます。
手に炭をもち、角をライターであぶれば簡単に火をおこせます。炭が少し赤くなったら、そのまま香炉の中央あたりの灰にかるく差し込みましょう。
・炭の近くの温められた灰の上にお香を置きます。
注意するポイント
・ギュッと押し固められた灰では、炭が消えてしまう場合があります。
その場合は割箸などで香炉の底の方からゆっくり灰をかきまぜ、空気を含むように灰をほぐしましょう。(混ぜていると軽くなります)
必要な道具
温めて使うお香の種類
香木をたいてみる
「お香の香木系の香りが好き」「香木の香りそのものを楽しんでみたい」という方は実際に香木をたいてみましょう。
香木自体は希少で高価なものです。ただ“自然の中で作られた、人の手の加わっていない香り”を体感する楽しみは香木でしか味わえないものです。また同じ銘柄の香木でも個体差で香りが違ったり、その香りに出会えるのは一度だけということもあるなど、ロマンあふれる香りだと思います。(一木限りの香りとも言われる所以です)
ごく少量でもよい香りを楽しむことができる、というのも香木のいいところ。現代を生きる私たちが博物館や美術館などで有名な歴史ある香木を今も見ることができるというのも、過去の持ち主たちが少しずつ大切に、すべて使い切ることなく後世に受け継いできたからです。
香木のたき方
気軽にたきやすい空薫や、焼香のように炭に直接くべて燃やしてたくという方法もありますが、香木本来の香りを引き出して楽しみたい方は香道で使われるたき方『聞香(もんこう)』がおすすめです。
また別途購入が必要になりますが、灰や炭などの用意が必要ない『電子香炉』でたくという方法もあります。
お手軽に空薫き(そらだき)
香炭と灰と香炉があればできる方法です。火をつけずなるべく手軽に香りを漂わせたい時に。
空薫きの詳しい手順へ
本来の香りを楽しむ聞香(もんこう)
香道で行われる方法で、香炭団と灰と香炉に加え、銀葉を使って薫く方法です。
聞香の詳しい手順へ
火を使わない電子香炉
電熱線の入った専用の香炉を使って、炭と灰がなくてもたく事ができる方法です。
電子香炉の一覧
香木の種類について
香木とは伽羅(きゃら)・沈香(じんこう)・白檀(びゃくだん)など、自然変異により木自体が香りを発するようになった木のことをさします。和風の香り(香木系)のお香やお線香の原料にもなります。
伽羅(きゃら)
伽羅は超一流の調香師にも「この香りは神様が創った香りであって、これを我々人間が創りあげる事は不可能である」と言わしめる程の香りをもつ、究極の香木です。
木に含まれる樹脂分が香りの素なのですが、えも言われぬよい香りを醸し出し、何にも例えようがないこの伽羅の香りに織田信長や明治天皇など多くの歴史人が魅了されてきました。
本来、香木は温めることで香りを楽しむものなのですが、樹脂分の含有量が多いからか伽羅はそのままでも大変良い香りを放ちます。年々その入手が難しくなっており、価格は未だに高騰し続けています。
沈香(じんこう)
沈香のその名は「沈水香木」(=比重が重く水に沈む香木の意)が由来となっています。
東南アジアの熱帯地域で育つジンチョウゲ科の木に外的要因で傷ができた時、その傷を治すために集まった樹脂の成分が変質し香りを放つようになったものが沈香です。そうなるまでには大変な年月がかかり、伽羅と同様に大変貴重な香原料といえます。
沈香は産地や熟成度合いなどによっても香りや価値が異なり、ベトナム産やインドネシア産、マレーシア産やカンボジア産などそれぞれ特徴的な香りがします。
沈香も需要が高まり、過去よりも年々良質なものが採れにくくなってきています。
白檀(びゃくだん)
白檀は香木系のお香やフレグランス系のお香のベースなど、最もお香原料に使われている香木です。
名前を知らなくても一番知られている、親しみのある香りかもしれません。
白檀の木で香るのは木の中心部分(心材)と根の部分だけで、伐採してから香りが立って熟成するまでに20年以上の長い年月がかかります。常温でも香るというのが特徴で、お香の材料以外にも仏像などの彫刻品や扇子の材料としてもよく用いられました。現在では小さなチップ状でしか入手できない、貴重な香原料です。
主な産地はインドやインドネシア、フィジーなどで産地によって香りが異なります。伽羅や沈香とは違う、涼やかで甘い香りが特徴です。
香木の形状について
香木の形状は人の手が加わることなく自然にできる形状のものと、人の手で加工して作られる形状と分かれます。
自然にできる形状は木のどの部位に樹脂が固まったのか、どのような原因で樹脂が固まり香木ができたのかによります。
個人的に楽しむのであれば、形状によって使い方・使うシーンが限られることはありません。
角割などは形状が整い美しいことから香道や茶道の席で用いられたり、贈り物としてよく使われる形です。刻みもその使いやすさからギフトにされることが多くあります。個人で楽しむのは自由ですから、香木の種類や産地などによって変わる香木の個性をいろいろと楽しんでみましょう。
自然にできる形状
加工して作られる形状
切葉
白檀の丸太をそのまま輪切りにした形です。見た目の美しさから贈り物にしたり、ほぐして焼香・聞香・空薫にも使います。
お香で暮らしに彩りを
火をつけたり温めたりするお香とまた違う楽しみ方ができるのが『常温で楽しめるお香』です。その一番の魅力は、道具がなくてもそのお香単体ですぐ使える・楽しめるというところでしょう。
だからこそ香り自体を持ち歩いたり纏ったりと、部屋でゆっくり楽しむ使い方とは違った使い方ができます。
香りを持ち歩く・まとう
香水など自分の好きな香りを身にまとっていると、それだけで幸せな気持ちになれますね。
お香でも同じようなことができるというのは、香水ほど一般的には知られていないのではないでしょうか。
平安時代の貴族たちは自分で調合したオリジナルの香りを着物に薫き染めて、その香りを身にまとっていました。香水にはない、和の香りをまずは手軽に身にまとってみませんか?
香りでおもてなし
いい香りが漂う空間で幸せな気持ちになるのは、自身だけでなくその空間にお招きするお客様も同じではないでしょうか。
来客前にお香をたいたりお香を身に着けたりして『残り香』をほのかに漂わせることで、室礼や清潔さなどの見た目だけではなく、空間全体でおもてなしできるというのがお香の最大の魅力です。
香りの空間をつくる
例えば…
・お客様が来られる30分位前までにお香をたき、ほんのりと香る残り香でやさしくお客様をお出迎えする
・名刺入れに文香を忍ばせることで、もうひと工夫加わった香りつきの名刺に
・洗面所(パウダールーム)や客間など、お客様が使用される場所に匂い袋を活用する
など、香りでできるおもてなしの可能性はまだ未知数です。
お香を心から楽しむことで、おもてなしのアイデアはまだまだ広がっていくでしょう。
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